散骨とは、遺骨を墓地に埋葬しないで、細かく砕いて、遺灰にして海や山などに撒くことです。
自然葬と呼ばれることもあります。
法律上の規定はなく「節度をもって行えば問題ない」とされています。
お墓の中ではなく、山や海など、遺骨を自然に撒く散骨は大自然に還るという想いを込めて行う人が多いようです。
場所の選択などが原因のトラブルを防ぐために、希望する場合は、専門の業者に依頼したほうがよいでしょう。
目次
海洋散骨
空中散骨
空中散骨とは、ヘリコプターやセスナなどに乗って、高度の空から散骨を行うことです。
散骨を行う主な場所は、許可をもらった山や海の上空などです。
高度であっても、節度がある散骨を守るため、町の上空などでは行いません。
最近では、バルーンをつかった空中散骨なども行われています。
空中散骨の流れ
空中散骨の主な流れは、
①散骨の場所を決定する。私有地なら許可が必要。
②業者を選び、ヘリコプターやセスナなど交通手段を決める。
③実施日、チャーターした交通手段で目的地へ向かい、散骨を行う。
となります。
天候によっては実施日が変更になることもあります。
空中散骨を行う理由
空中散骨を選ぶ理由は、故人が青空が好きだったり、星空をよくみていたなどの理由で選ぶことが多いようです。
その他、関係者が地方に点在しているなども多いようです。
空は世界中のどの場所にいても見えることから、つながっているということをかんじられるからかもしれません。
空中散骨のデメリット
ヘリコプターなどのチャーター費がかかるため、海洋葬に比べて割高になることが多くあります。
また、空中散骨は、ヘリコプターやセスナなどに乗って行われるため、一緒に行える人数が限られています。
ヘリコプターに同乗できる平均的な人数は、操縦士を除いて、3~5人程度です。
散骨を一緒に行いたい人が十数人いた場合には、ヘリコプターを複数台チャーターすることも不可能ではありませんが、危険性などを考えると実行は難しいでしょう。
散骨を希望する人の理由
下記のような理由で散骨を希望する人は増えています。
- お墓を継ぐ人がいない
- お墓を建てる費用を出せない、出したくない
- 死後は自然に帰りたい
- 子どもに負担をかけたくない
散骨が広く行われるようになった背景には、お墓の維持や継承に関するトラブルを避けるためといった考えもあります。
しかし、それ以上に後継者がいないため墓守りを確保できない、お墓がない、お墓に費用をかけられない、かけたくないといったことが挙げられます。
もともと、人は死んだらお墓に入るものといった従来のイメージから、死=墓のイメージがありますが、人が亡くなったらお墓を造る、建てなければならない、という法律や規定はありません。
つまり、お参りをするためといった理由がなければ、散骨にお墓は必要ありません。
また散骨は、お墓を建てないため、継承者も必要ありません。
お墓が要らず、継承者も不要というのが散骨の特徴です。
この特徴は、遺族に手間をかけたくないと考える人にとって、散骨を行うメリットの1つと言えるでしょう。
実際に、散骨についてどう思うかに対して、次のようなアンケート結果があります。
第一生命保険(株)2010年7月『お墓のゆくえ-継承問題と新しいお墓のあり方-』
このように、散骨は認知され、女性では、3人に1人が散骨を希望するほど関心が高まっています。
散骨を希望する人がすべきこと
死後いきなり「散骨して欲しい」というメモが見つかっても、遺族は戸惑うことでしょう。
生前から家族にしっかり意思を伝えて、散骨を扱う業者を探して、具体的な場所の候補や方法、手続きの仕方を確認しておきましょう。
その上で、どこにどのように散骨するのか、散骨を依頼したい業者はどこか、その後の法要や、墓参りに代わるものはどうするのかなど残された人のために、具体的に考えましょう。
そして、遺言書など正式な書類の形で残しておくことが重要です。
散骨で注意すべきこと
喪失感が増す
最近、海や指定された山里に遺灰を還す、散骨への関心が高まっています。
特に団塊の世代に希望が多いようです。
ところが、実際に散骨を行った遺族の中には、時間の経過につれて、故人の存在を確認する遺骨がないことで、喪失感が増してしまうケースもあります。
故人の意思と供養する遺族の気持ちの両方を尊重するためには、遺骨の一部を手元に残して散骨する方法をおすすめします。
残した遺灰、または遺骨を手元供養にすることで、心が落ち着いたという方もいます。
全ての遺骨を散骨する必要はない
散骨では、遺骨をすべて撒いてお墓を建てないケースもあれば、大部分は墓に納めて、遺骨の一部を撒くケースもあります。
このように骨を分けること(分骨)もできます。
もし、すべての遺骨を撒いてしまう場合には、その後の法要をどうするか考えておかなければなりません。
遺族は墓参りの代わりにどのように故人を偲ぶかも考えておかなければなりません。
例えば、散骨を行った場所に出向いたり、遺骨の一部を取り分けて小さな骨壺などに入れて自宅に置いて故人を偲ぶなどといった方法もあります。
もし、海で散骨したならば、実際に散骨した海でなくても、海が見える場所で故人を思う、というお参りも考えられます。
日本では、散骨を希望する人の多くは、全部の遺骨ではなく一部を散骨にするケースが多いようです。
すべての遺灰を散骨する場合
その後の法要を行う際に、遺骨がないということになります。
したがってどのような形式で故人を偲ぶか、考えておく必要があります。
遺灰の一部を散骨する場合
火葬のときにあらかじめスタッフに伝えると、散骨用の遺灰を受け取ることができます。
すでに埋葬してる場合
すでにお墓に埋葬している遺骨を散骨したい場合には、墓地の管理者の了解のもと、遺骨を出してもらう必要があります。
遺族が勝手に行うことはできません。
特に、お墓が寺院墓地にある場合には、改葬と同様に、寺院には誠意をもって依頼、説明しましょう。
その上で、墓地や霊園の管理者の許可を得て、僧侶などに取り出してもらいます。
散骨後、お墓が必要なくなる場合には、墓石の御魂抜きを行い、墓石の撤去後は更地に戻して返還します。
なお、遺骨をほかの墓地に移すわけではないので、改葬許可証の申請は必要ありません。
散骨の手続き
①親族や友人への連絡、関係者への同意
葬儀などの準備で悲しむ時間がなかったという例は珍しくありません。
いざというときにスムーズに進められるように、故人の交友関係を把握しておきましょう。
例え喪主が決めた場合であっても、必ず関係者に同意を取りましょう。
②故人の生前の意思の確認、散骨場所の決定
故人が生前に散骨してもらいたい場所などを決めていたなら、その場所で散骨が行えるか確認しましょう。
もし、決めていないのであれば、実施者がふさわしいと思える場所を決めましょう。
③業者の決定
その業者に頼むかを決めて、具体的な日程、進行を決めます。
④散骨実施日の決定、交通手段の確保
散骨の時期は特に決められていません。
故人や実施者の意思により、決めることができますが、次のような日に実施することが多いようです。
- 火葬後すぐ
- 四十九日あけ
- 一周忌
- 故人の記念日
また、散骨は場所によっては、そこに行くまでが困難である場合もあります。
例えば、よく泳いでいた海に散骨して欲しいと故人が希望していたならば、船やヘリコプターなどを手配しなくてはなりません。
さらに、散骨場所として海や山を選び、屋外で散骨する場合には、天候などにも配慮する必要があります。
もし、希望の実施日があったとしても、その日が強風や雨など悪天候の場合には、無理に実施せずに、別の日に行いましょう。
⑤散骨の実施
周囲に迷惑をかけないように、散骨を実施しましょう。
遺骨は穢れがあるものではありませんし、衛生上問題があるものではありません。
しかしながら、心情的に遺骨に触れることを拒む人もいることを考慮しましょう。
そのため、散骨はできるだけ痕跡を残さないように行うなど、周囲に対して配慮しましょう。
散骨業者選びのポイント
散骨には、基本的に特別な届け出や書類の提出は必要ありません。
海や山のほか、周囲の人の理解を得られれば、自宅の庭などでも可能です。
とは言え、ふさわしい散骨場所を探して、散骨してもらうことは簡単ではありません。
そのため、散骨を希望する場合には、散骨を実施している民間業者のプランを利用すると良いでしょう。
散骨の認知度に比例して、散骨を行う葬儀業者の数も増えています。
数ある業者の中から、故人の遺志をきちんと叶えてくれる業者を選ぶには次のような点に注意しましょう。
- 実績、経験
- 料金、サービスの内容
遺族の立会いなし:5万円前後
船に複数の遺族が乗り合う:10万~15万円前後
船の貸し切り:船の大きさによって15万~30万円前後 - 粉骨をしてくれるか
- 散骨証明書を発行してくれるか
- 所在地、営業場所
- 利用者の評価、信頼性
多くの業者は、インターネット上のホームページで、サービスの内容や料金などを掲載しています。
自分が求めているサービス、予算や想定している規模などをよく考えて、比較するようにしましょう。
ただし、ホームページに掲載されている内容はあくまで目安で、場合によって行えないサービスもあります。
また、料金が大きく異なることもあるでしょう。
そのため、最初から1つの業者に絞らないことも大事です。
実際に業者に話を聞いてみると、そこが最適のように感じてしまうかもしれませんが、他の業者にも話を聞いてみて、信頼できるところから何社かピックアップして、じっくり考えましょう。
NPO 葬送の自由をすすめる会(東京都文京区)
自然葬の委託を受けつけている「葬送の自由をすすめる会」などの団体の会員になっておくとよいでしょう。
葬送の自由をすすめる会は、葬送の自由を推進することを目的に、遺灰を海や山への自然葬(散骨)の普及を進めている市民団体です。
会員になると、希望すれば自然葬を申し込むことができます。
自然葬には他の人とともに行う特別合同葬・合同葬、個人層があり、自然葬の契約は本人の生前契約と遺族が会員となって契約する方法があります。
会費は年額3000円(30歳未満は2000円)で、自然葬にかかる費用は4万8000円~6万円です。
散骨の業者選びのチェックポイント
Point1.どのような葬儀にするか、あらかじめ決めておく
故人の遺志を尊重して、規模や予算などをあらかじめ決めておきましょう。
予算などを含めた相談を業者にすることは避けましょう。
Point2.ホームページの情報は必ず確認する
条件によってはホームページに表示されているサービスを行えない場合もあります。
必ず電話などでこちらの要望をかなえられるか確認しましょう。
Point3.専門の業者かどうか確かめる
自分たちでは散骨せず、他の業者へ丸投げする散骨仲介業の業者が稀に存在します。
Point4.料金を曖昧にする業者は避ける
葬儀はオプションなどによって料金が変わることもありますが、「50~100万円かかります」というふうに料金の幅が大きい業者は避けましょう。
Point5.親身になってくれる業者を探す
こちらからの細かい要望にもきちんと対応してくれる業者を選びましょう。
Point6.利用者に話を聞く
実際にその業者を利用した人に話を聞きましょう。
ただし、インターネット上の評判はそのまま鵜呑みにしてはいけません。
Point7.時間をかける
葬送の進行はスムーズに行いたいと誰もが思いますが、決して焦ってはいけません。
散骨の歴史
散骨は1991年頃からマスコミによって話題になりました。
当時、NPO法人「葬送の自由をすすめる会」というものが結成されて、死者を葬る方法は、亡くなった個人や遺族によって自由に決められるべきとして、散骨を広く世に問いかけました。
実際に、神奈川県の三浦半島沖の相模灘で初めて散骨を実施して、当時それが注目を集めました。
「墓地、埋葬等に関する法律」や刑法第190条の遺体遺棄に触れないかどうかの議論もありましたが、厚生省と法務省からの「刑法190条の規定は、社会的習俗としての宗教的感情などを保護するのが目的であり、葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り違法ではない」というコメントがあり、散骨は法的にも容認されるようになりました。
実際に日本で行われる散骨の実施数は、年間百数十件と決して多くはないものの希望者は実施できます。
散骨をサービスとして、行っている事業者もあります。
法律から考える散骨の是非
著名人が散骨を行ったり、関連業者が増えたことから、散骨も広く知られるようになってきました。
しかし、まだ、散骨は違法なのでは?と思っている人は少なくありません。
散骨が違法であると考える理由の1つに、昭和の大スターである石原裕次郎さんの散骨が違法であるという解釈のために、実現しなかった有名な例があります。
1987年に石原裕次郎さんが亡くなった際に、兄である石原新太郎さんが、弟である石原裕次郎さんが海を愛していたので、遺灰を太平洋に還してやりたい、と願いましたが、法律に照らして断念しました。
墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)
遺体の火葬や、墓地・納骨堂への遺骨の埋葬について定めている「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)には、散骨についての規定はありません。
墓埋法は、昭和23年(1948年)に制定された法律で、長い間、死んだら必ずお墓に入らなければならないという固定的な1つの解釈にとどまっており、散骨はそのときには想定外の埋葬方法でした。
墓埋法によれば、
第四条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
とあり、遺骨を墓地以外に埋葬することは法に触れることになります。
ただ、埋蔵というのは、骨を墓に入れることであり、粉にして撒くとなると、埋蔵ではありません。
したがって、散骨は、この条文には形のの上では抵触しないと思われます。
ただ、墓埋法の精神からするとやはりこのような散骨は想定しておらず、遺骨の処理はこの墓埋法に則って対応すべきとすると、適正な行為とは言えなさそうです。
そのため、多くの人は、祖先を崇拝するためにも、亡くなった人はお墓に入れて祀らなければならないという、明治期に確立された通念から抜け出せず、散骨は法に触れるものと解釈されてきました。
刑法190条
墓埋法以外の法律では、刑法190条に抵触しないかという観点もあります。
(死体損壊等)
第190条
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
刑法190には、遺骨に対する言及があり、遺骨を遺棄することは、犯罪となります。
遺骨を骨のまま捨てても、粉にして捨てても同じことで、遺棄にあたります。
また、遺骨を粉にするということ自体、遺骨の損壊にあたります。
ただし、本人の遺書等に散骨の希望があり、それにしたがって散骨するならば、遺棄にはあたらないのでは?という意見があります。
そもそも火葬後の焼骨の扱いには東日本と西日本において大きな違いがあります。
東日本では多くの場合すべて拾骨されますが、西日本では拾骨されるのは一部で、残りは特定業者により産業廃棄物として正当に処理されます。
同じ遺骨であっても、産業廃棄物として認定されるか否かで刑法190条に触れるかどうか決まります。
故人の遺志によって行われる散骨に関しては、遺灰は産業廃棄物としての意味合いはなく、法に抵触しないという考えが生まれました。
また、この点に関しては、単に本人の意思に従うかどうかということだけではなく、一般的な犯罪の防止や公衆衛生の点からも判断されるべきでしょう。
海に撒くという場合でも、海は広大で少々のことで汚れるわけではありませんが、制約がなくてよいとは言えません。
実際のところどうなのか?
現代の法律に基づいても、一般的な、正式な手続きを経て火葬を行った遺骨の保管場所・保管方法などは、故人や遺族の意思で決めることができます。
墓埋法は、土葬と火葬が半々だった終戦直後の1948年に制定された法律で、第4条は公衆衛生の面から土葬による伝染病や疫病などの広がりを防ぐためにできた条文と考えられます。
そのため、この条文を火葬率が99%の現在に当てはめるのは難しいでしょう。
それらを踏まえて、遺灰を撒く散骨に関しては、墓埋法は遺灰を海や山に撒くといった葬法は想定しておらず対象外で、社会的習俗としての宗教的感情を保護する観点から、葬送のために節度を持って行えば、遺骨遺棄罪には当たらないと1991年に、当時の厚生省および法務省が発表しています。
ただし、この発表は、法律の観点からと言うよりも、行政として取り上げないということです。
散骨は節度をもって
合法であることが証明されたこともあり、現在では、散骨は市民権を得るまでに広まっています。
ただし、節度を守った行動が前提です。
この場合の節度として、通常考えられ、行われていることは次のようなことです。
- 追悼の意をもって行う
- 遺骨は粉末状に細かく砕く
- 撒く地域の理解を得る
- 周辺に暮らす人の住民感情に配慮する
- 自然環境に配慮する
- 自分の土地以外に散骨したいときは地主の了承を得る
- 家族親戚など周囲の人の了承を得る
などです。
一方で、故人の東京への思い入れが強いからと言って、東京の上空から行う散骨は、節度があると言うことはできません。
身内だけでなく、散骨を行う場所の近隣住民への理解を得ることも重要です。
また、散骨を行う際に副葬品などを考えている場合には、花びらやお酒など自然に還るものを選ぶのが適当で、遺品などは避けるようにしましょう。
自治体によっては散骨NGのところも
しかしながら、自治体によっては、条例で散骨を禁止するよう制定したところもあります。
これは、散骨場所をめぐって近隣周辺とトラブルになったケースもあるためです。
北海道長沼町や埼玉県秩父市などの自治体では、条例により散骨を規制しています。
散骨を希望する場合は、必ず確認するようにしましょう。
本人や家族等が散骨を希望する場合は、役場の窓口や関係団体に相談をしましょう。
また、もし海外で散骨を希望する場合には、その国の法律に従って違法でないか確認しましょう。
今後の散骨に関する法律の整備
世界的にみると、イギリスやフランス、アメリカのカリフォルニア州の法律では、遺灰を撒く法律が定められています。
日本では、直接的に該当する法律はなく、法務省の見解の通り、節度をもって行う限りという曖昧さが残っています。
そのため、今後、散骨の場所を指定するなので、法律が制定される可能性もゼロではありません。
お墓を必要としない考え方は、確実に広まっており、散骨などの葬送を希望する人は増えています。
需要に合わせた法律が検討されるようになることでしょう。
散骨は仏教の教えに反するのか?
散骨は、仏教の教えに反するかどうかですが、浄土真宗の開祖である親鸞は、「閉眼せば、賀茂河にいれて魚にあたふべし(死後は、賀茂川に入れて魚に与えよ」と言う言葉を残しており、仏教の教えにも反していません。
すべてを業者任せにせず、自分で散骨してみよう
認知度は高まっていますが、まだ散骨を自分の手で行うことは圧倒的に少数派です。
そのため、若干の抵抗を覚える人もいることでしょう。
また、こういった専門的なことは、業者に依頼するほうが安心、という考えの人も多いでしょう。
しかしながら、散骨には法的な手続きや規制がないため。。必ずしも業者に頼まなくてはならないわけではありません。
葬送を目的として、節度をもって行われる限り、個人で行うことも認められています。
かけがえのない故人を思い出の地に散骨したり、誰にも邪魔されずに家族水入らずで散骨したりすることは、できれば自分で行いたい考える人もたくさんいることでしょう。そのため、遺骨を砕く作業や土地探しなどは一部の業者に任せて、他の手続きは自分で行うというケースが増えています。
このような需要に伴って、遺骨を砕いたり、遺骨の粉末化のみを請け負う業者も増えています。
個人で行う散骨に対して、最初は抵抗を覚える人も少なくはないでしょう。
しかし、実際にやってみると、やって良かったという人が大半です。
個人で行うことは、自らの手で故人を見送ったという実感を持て、心理的側面での充足感が大きいと体験者は言います。
大切な故人との時間を長く過ごすという考えのもと、全部を業者に任せるのではなく、一部は自分で行うことも考えてみても良いでしょう。
散骨ができる場所
「墓地、埋葬等に関する法律」によると「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」として墓地以外への埋葬は禁止されています。
しかし、散骨は、遺骨を2㎜以下に砕いて、節度を持って行えば、処罰の対象にはならないとされています。
散骨の場所は、土地主の許可を得ることができれば、基本的にはどこでも行うことができます。
ただし、場所も踏まえて、節度をもって行わなければなりません。
また、散骨禁止の自治体もあるので、NPO法人などに相談するのがよいでしょう。
散骨の粉末化
散骨するためには、遺骨を粉末状にしなければなりません。
この作業は、自分でハンマーやすりこ木などを使用して行うこともできますが、散骨を実施する業者や、葬儀社などが遺骨の粉末化処理を請け負っています。
ただし、別途粉末化にかかる費用がかかります。
粉骨を請け負う業者は全国にあり、平均して3万円前後で請け負っています。
なかには、郵送で受け付けを行っている業者もあります。
粉骨の方法はいろいろあります。
①粉砕機
個人で粉砕機を購入し、粉骨する方法です。
手ごろなものでは、3万円前後で販売されています。
ただ、粉砕機は力が強いため、入れた瞬間に粉になり、あっけなさを感じるかもしれません。
②乳鉢
手作業で粉骨を行う方法として、乳鉢と乳房を使う方法があります。
遺骨には固い部分もあり、場合によってはかなり大変な作業になりますが、自分の手で粉骨することで、故人を見送る気持ちが強くなることでしょう。
手作業で粉骨を行うキットを販売している業者もあります。
③石臼
昔は、遺骨を粉にするときは石臼などが用いられていました。
熱を使わず、低速で粉にする優しい道具と言えます。
ただし、現在では基本的に使われません。