実は、お墓参りの方法でこうでなければならないという規則はありません。
一番大切なのは供養する心がきちんとこもっているかです。
とは言え、一般的にみなさんがどうやっているかは気になることでしょう。
地域によっては、墓に水をかけないや、供え物はその場で食べるなどのしきたりもあるようですが、一般的に行われているお墓参りのマナーと作法を説明します。
目次
お墓参りの作法
作法①:寺院墓地の場合はまず住職にあいさつ
寺院墓地の場合は、住職にあいさつをして、本堂(ご本尊)にお参りをしてから、自分の家のお墓参りをします。
お墓参りの作法②:お墓の前で一礼して合掌
自分の家のお墓に着いたら、いきなり清掃にとりかからず、まずは、お墓にあいさつをしましょう。
お墓参りの作法③:お墓とお墓の周りの掃除
次に、お墓の掃除をします。
家族総出でお墓の掃除をして、改めて先祖に感謝の気持ちを示しましょう。
お墓参りの際は、掃除用具も持参します。
手桶、ひしゃく、ほうきなどは、霊園などの入口に備えてあることが多いようです。
たわし、スポンジ、雑巾、植木の刈り込みバサミ、鎌、ゴミ袋などを持参します。
また、ゴム手袋なども用意しておくとよいでしょう。
清掃用具以外に、選考に火をつける着火用具、供物や生花も忘れないようにします。
清掃するときは、墓石に水をかけて汚れを落として、たわしでこするなどしてから、タオルで拭き清めます。
お墓は天然の石でできているので、汚れなどを放置しておくとシミができたり、石が傷んでしまいます。
そのため、掃除は水洗いが基本です。
やわらかいスポンジや布に水を含ませて、洗いましょう。
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花筒の中もきれいにして、新しい水を満たします。
植木が伸び放題になっていたら刈り込み、砂利の間から雑草が伸びている場合は取り除きます。
周りのゴミも拾いましょう。
お墓参りの作法④:お供えをする
お墓が清められたら、水鉢・花立を洗い、きれいな水を満たして花を飾ります。
墓前に供える仏花には、シキミやキクが用いられることが多いです。
霊園や墓地の周辺、管理事務所などで購入できます。
とは言え、お墓に供える花に決まりはなく、仏花でないといけないというわけではありません。
ただし、香りの強い花やトゲのある花は避けたほうがよいでしょう。
花立てに花を飾る場合は、左右対称になるようにきれいにいけましょう。
お菓子や果物などのお供物は、墓石の上に直接置かず、半紙や紙皿を敷いて中央に供えます。
水張りがない場合は、湯飲みに水を入れて備えます。
ろうそくを立て、火を灯します。
線香は、そのろうそくから普通は束のまま一度に火をつけて線香立に供えます。
線香のお供えの仕方は、線香を寝かしたり、折って寝かしたり、1本・2本立てるなど方法はいろいろあります。
線香を墓参りの人数に分けて、それぞれが香炉に入れて供える場合もあります。
人数が多い時には、初めの人がお線香の束をあげるか、あらかじめ家族があげておきます。
供える線香には決まりはありません。
一般的なお墓参り用のものもありますが、好きな香りのお線香があれば、それを利用してもよいでしょう。
また、線香をあげるときは、一度にたくさん炊くと、高熱で香炉にヒビが入ることがあるので注意が必要です。
線香の炎は口で吹き消さず、手であおいで消します。
次のお墓参りまで期間がある場合
次にお墓参りに来るまでに期間がある場合は、花も枯れて汚れの原因になるので、処理を寺院や霊園の管理事務所にお願いしてみるとよいでしょう。
お墓参りの作法⑤:お参りする
一般に、家族から親族へというふうに故人と縁の深い順に一人一人行います。
複数でお墓参りに行ったときには、故人と縁の深い順に、お参りしましょう。
1.各自、手桶から柄杓で墓石に水をかけます。
数珠を左手に持ち、手桶に新しくくんだ水を、ひしゃくで墓石にかけます。
これは、墓石を清めるためと、亡き人に食べ物を施す、仏ののどを潤すための意味があります。
なかには、生前お酒が好きだったからと、お酒を墓石にかける人がいますが、これは墓石を傷めるので控えましょう。
もし、どうしてもお酒をかけたいという人は、かけた後で墓石を水で洗いましょう。
2.合掌する
次に墓石に一礼します。
数珠を持ち、墓石の正面に向かい、合掌します。
これは、水をかける前と後にするのがよいでしょう。
先祖を敬う意味で、しゃがむか腰を低くする場合もあります。
両手を合わせ、先祖や故人の冥福を祈り、お経を唱えられれば唱えても構いません。
全員が墓前で両手を合わせ、先祖や故人の冥福を祈りましょう。
お墓参りでは、私たちはお墓の前で手を合わせます。
数珠を親指と人差し指の間にかけて、手と指を隙間なく合わせて合掌します。
数珠は、若い人はともかく、40歳を過ぎた人なら持っておきたいものです。
ただ手を合わせるだけでも、お墓に入っている人の冥福を祈ることができます。
また、私たちも手を合わせたことで、功徳を積むことができます。
お墓参りをすることで、ご先祖様が私たちを守り、救ってくれることもあることでしょう。
お墓参りでは、できれば、宗派にあった名号・念仏も唱え、心の中で故人に語りかけ、家族にあった出来事も報告しましょう。
時には迷い事も相談して、家族の幸せをあの世から守っていただくようにお願いしましょう。
このような行いによって、私たちは、ほんの短い時間でも日々の生活や暮らしの延長線上から逃れられて、別の角度から今の自分の生き方を見つけ直すことができます。
なお、区画内に先祖のお墓が並んでいる場合は、古い先祖の墓から順にお参りします。
お墓参りで唱える名号、念仏
宗派別に、名号、念仏は異なります。
名号、念仏は小さな声を出してもよいでしょう。
浄土宗・浄土真宗・天台宗
南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)
禅宗・曹洞宗・臨済宗
南無釈迦牟尼仏(なむしゃかにぶつ)
日蓮宗
南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)
真言宗
南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)
お墓参りの作法⑥:お墓参り後はお供え物を持ち帰る
お墓参りを終えたら、火の始末をします。
線香は燃やしきるようにしましょう。
供花はそのままでいいですが、お供物は持ち帰るのが、一般的です。
特に、お菓子や果実類は、墓地・霊園の規則として持ち帰りを義務付けているところも増えています。
これは主に、食べ物は腐ってしまいますし、腐らなくてもカラスや野良猫などによって食べ散らかされないようにです。
そのため、お供物は持ち帰るのがマナーであるとされています。
持ち帰っても、すぐに食べない時は仏壇にお供えしましょう。
ただし、お供え物は地域ごとに異なる慣習がありますので、気になる場合は確認しましょう。
もし、墓石に酒やジュースなどをかけた場合は、臭いが残らないように、水をかけて洗い流します。
刈り取った枝葉なども、ごみ袋にまとめて持ち帰りましょう。
お墓参りのタブーやマナー
①お墓にお酒をかける
お墓参りをするときに、故人が好きだったからとお酒を墓石にかける人がいます。
しかし、アルコールによって、墓石を変色したり、シミができたりすることがあります。
また、墓石の周りの植栽にも悪影響を与えることもあります。
お墓にお酒をかけることは控えましょう。
お酒はかけずに墓前に供えます。
②落ちにくい汚れにはスチールたわしを使う
墓石は硬度が高いとはいえ、鍋のコゲを落とすためのスチールたわしや紙やすりでこすってはいけません。
食器洗い用のスポンジやたわしを使いましょう。
文字部分の汚れを落とすには、歯ブラシが有効です。
③アルミ缶など缶類は置いていかない
お供え物は、アルミ缶など、缶類を置いていかないようにします。
缶類を置いていくと、缶の跡がついたり、サビの原因になります。
④ご先祖様に願い事をする
神仏に願うという言葉はありますが、願い事をかなえることは仏教の目的ではありません。
試験に合格しますように、などといった願い事をするのではなく、試験勉強を頑張っていますとご先祖様に報告して、お見守りくださいとお参りするのがよいでしょう。
⑤友引や仏滅のお墓参りはNG
友引や仏滅は、中国の吉凶占いである六曜から来ているものです。
そのため、仏教とは関係がありません。
基本的には、友引や仏滅にお参りをしても問題ありません。
ただ、気持ちの上で気になるようでしたら、別の日にしたほうがよいでしょう。
⑥お墓参りは午前中する
お墓参りをするときは、午前中にした方が良いと言われることがあります。
しかし、特に決まりがあるわけではありません。
故人への気持ちや心がこもっているかどうかが肝心です。
午後になっても問題ありません。
お墓参りに持っていくもの
お墓参りに必要なものを紹介します。
手桶やひしゃく、ほうきなどはたいてい寺院や霊園で借りることができます。
雑巾やスコップなどが必要だったり、あると便利なものは持参するようにしましょう。
また、お参りのときに使う数珠や果物、菓子などの供物、飲み物、半紙、花、線香、線香をつけるときに必要なライター、ろうそくなども忘れないようにしましょう。
これらすべてが毎回必要というわけではありませんが、その時に必要と思えるものを見繕って出かけましょう。
お盆など夏場の墓参りなら、虫よけスプレーなども必要かもしれません。
掃除用具
手桶と柄杓、ほうきなどは墓地の管理事務所で借りられるところが多いです。
多くの場合、清掃のための手桶とひしゃくは、墓地の水場に備え付けられています。
墓地・霊園では、衛生上の理由でゴミ箱を設置していないところも多いので、ゴミは持ち帰るのが原則です。
- 手桶
墓地に設置していなければ持参する - 柄杓(ひしゃく)
墓地に設置していなければ持参する - ほうき
- ちりとり
- タワシ
- スポンジ
- タオル
- ぞうきん
- 植木用ハサミ
植木の手入れや供花の長さ調整に使います - 小型シャベル
- ゴミ用ビニール袋
出たゴミや切った枝葉を持ち帰ります
カラス対策のためにゴミ箱を設置していない墓地が多いので、出たゴミは持ち帰るのがマナーです
礼拝のための仏具
- ろうそく
最低2本、新しいものを用意します - 風よけカバー
風が強い墓地ならろうそくが消えないように持参する - マッチなど着火道具
柄の長いタイプのライターが便利です - 線香
1~2束を結束したまま持参する - 数珠
各人それぞれ1つずつ持参する - 肩衣(輪袈裟)
あれば持参する
お供え物
- 供花
同じもの2束を1対にして用意する - 供物
お菓子、果物、飲み物など供える。
お墓参りが終わったら持ち帰り、すぐに食べない時は仏壇にお供えします。 - 半紙
供物を乗せるために用意する
墓地によっては、他の道具も借りることができたり、売店で購入できたりもしますので、初回に確認するとよいでしょう。
お墓参りの時期
墓参りは、春と秋のお彼岸、お盆、祥月命日(故人の死亡した同月同日)、年期法要、年末などに行うことが一般的です。
月忌にも墓参りをすることがありますが、必ずこの日にといった決まりはありません。
進学や就職、結婚などの慶事を故人に報告したい場合、気持ちを整理したい場合など、自分が心から行きたいと感じたときこそが、墓参りのタイミングと言えます。
お墓参りをする時期に特に決まりはなく、いつでもお参りすることは可能です。
できるだけ機会を見つけてお参りしましょう。
お墓参りの時期はお彼岸、お盆、年末年始?お墓参りの時期について解説!
お墓参りにふさわしい服装
お墓参りでは、極端にラフであったり、派手な服装は好ましくありません。
ただし、特に意味のある法要でなければ、平服で良いでしょう。
掃除がしやすい動きやすい服装がおすすめです。
なお、最近亡くなった方の場合には、地味な色の服装のほうが失礼がありません。
一周忌は特別
一周忌のときは特別です。
家族以外の人も集まりますので、施主側の人は、略式礼服または礼服が一般的です。
呼ばれた側は、案内状の服装に従うか、ダークスーツなどきちんとした服装で行きましょう。
三周忌以降の各周忌では、家族も略式礼服の必要はありません。
しかし、きちんとした服装はしておきたいものです。
親族以外がお墓参りをしたい場合
一般的には、お彼岸やお盆、故人の命日などにお墓参りをします。
もちろんこの時期に限らず、お参りをしても構いません。
ただし、基本的には故人の親族が行うものです。
亡くなった友人のお墓参りに行きたい場合などは、親族に連絡をとってから行くのがマナーです。
連絡をとる際もタイミングに配慮しましょう。
一周忌前などであれば故人の自宅に伺って線香をあげさせていただく方がよいかもしれません。
服装に決まりはありませんが、あまり派手でないものにします。
故人の自宅に寄る場合は、地味な色の服装にしましょう。
お参りの際は、花や線香とともに故人の好物などを供えます。
ただし、鳥などに食べ散らかされることもあるので、お参りを済ませたら必ず持ち帰りましょう。